佐伯先生の優しすぎる嘘





「……私、です」







誰もいない廊下に、小さく呟いた私の声。

外で鳴く蝉の音が、急に煩いくらいに大きく聞こえる気がした。




「…え?」



「佐伯先生のこと、好きで…

でも渡す前に諦めたので、佐伯先生は何も知りません」




信じられないような表情の中尾先生の目が見られない。




「…あなた1年生に妹いるわよね?
私はそっちだと思ってたんだけど…」




「違います、桃果は関係ないです」




言い張る私に、怪訝そうな顔をする中尾先生。



「水島さんは優秀なんだから、こんなことする子だとは思ってなかったわ…」




その言葉に、胸が痛くなる。




「まあ諦めたなら良かったわ。

ただ、教師にそんな感情を持つのはどうかと思うわよ。

佐伯先生は若いから憧れるのも無理はないけど…

水島さんのことはすごく信用しているから、正直残念だわ」





手紙を渡したのは本当は私じゃないけれど、佐伯先生を好きな気持ちは私も同じで。


その言葉はどうしたって私に向けられたもので。



じわり、と涙が浮かんだ。