佐伯先生の優しすぎる嘘





「わ、っ」



佐伯先生がいた。


「あー…ごめん。
見るつもりじゃなかったんだけど、通れなくて…」




気まずそうに髪をかきあげる佐伯先生。

み、見られてた…。

好きな人がいるっていうのも、聞かれてたかもしれない。




「あの、」


「や、忘れるから!
ごめん、覗いたみたいで」



どうしようか、と困っている佐伯先生。

そうじゃ、なくて。




「聞こえ、ましたか…?」

「え?」

「好きな人…」




え、あー。

なんて反応からして絶対に聞こえてたと確信する。

いや、自分のことだって気づかれてるわけはない…と、思うんだけど。


でも他の人を好きって思われてたら、それはそれで悲しいというか。