佐伯先生の腕時計は、見た目よりも重くない。
カチ、カチ、と刻む秒針の音が、不思議と心地よかった。
「失礼します…」
職員室のドアをそっと開けると、夏休みだからか先生は2人しかいない。
涼しい部屋をぐるりと一周見回して、佐伯先生の席を見つけた。
「佐伯先生、いらっしゃいませんか?」
誰も座っていないその席を見て、他の先生に聞いてみると、さっき職員室から出て行ってしまったらしい。
「もうすぐ戻ってくると思うけど、何か伝言なら伝えておこうか?」
腕時計は、机の上に置いておいても良かったけど。
でも、どうせなら、佐伯先生に会いたくて。
「いえ、少し待ってます」
「そう、分かった」
佐伯先生の机の前で待つ。
クーラーが効いていて、コーヒーの匂いのするこの部屋はやっぱり先生の部屋って感じで。
そこにある佐伯先生の生活感に、やっぱり先生なんだなぁ、なんて少し寂しくなった。
「…あ、眼鏡」
汚いわけではないけど、あまり片付いているともいえないその机の上に、黒縁の眼鏡。
綺麗なレンズが、電気の光を反射した。



