佐伯先生の優しすぎる嘘






「暑いー…」




しばらくすると、扇風機があるとはいえ教室は外みたいに暑くなる。



「何か飲み物買って来る!
みんな何が良い?」



「わ、杏奈ありがとう!」
「俺コーラ!」
「オレンジジュース」



みんなからお金を受け取って、1階にある自販機に向かった。




「えー、あははっ」




渡り廊下の方から聞き覚えのある笑い声がして、ふと足を止める。


壁の影から覗くと、そこにはなんと佐伯先生と桃果がいて。





「佐伯先生って彼女いないんですか?」

「あー、うん」





…仲、良かったんだ?


思わず壁の影に隠れてしまった。





「彼女いないなら私と付き合おうよー」


「うん、遠慮しとく」



私には言えなかったことが、桃果には言える。


私にできないことができる桃果は、いつだって羨ましい。



2人に気付かれないようにそっとその場を離れて、自販機に向かった。





「えっと、コーラとジュースと…」





お金を入れてボタンを押すとガコン、と出てくるペットボトル。



「…どうしよう」



何も考えていなかったけれど、普通に考えて10本近くあるペットボトルを1人で持って帰るなんて無理だ。


両手に抱えても、4本が限界。



うーん、何か袋でも持って来ればまだ良かったな…。