佐伯先生の優しすぎる嘘





「俺、水島さんのこと好きで、その…
良かったら付き合ってもらえませんか?」





俯きながら言われたその言葉に少し驚く。




「…ありがとう。
でも、私あなたのことよく知らないので…お付き合いはできません…」


ごめんなさい、と続けると、そっか、と返ってくる小さな声。




「好きな人…とか、いるの?」


「えっ…う、うん」


…叶わない恋、だと思うけど。

さっきの眠そうな佐伯先生の顔が頭に浮かぶだけで、ふわりと嬉しくなる心。

うまくいかなくたって、それだけで幸せだと思う。



「…そっか、頑張って。
話聞いてくれてありがとう」


「こ、こちらこそありがとう!」



慌てて頭を下げると、彼は優しく笑ってくれた。

背を向けて昇降口に向かって行ってしまったので、私も教室に向かおうとすると。