━━私の頭が真っ白になっていた時、一瞬だけ見た。



クウの顔が悲しそうに歪んだのを。



エノちゃん…クウに何を言ったんだろう。



幼なじみの私ですら、過去に一回しか見たことのない表情。






━━あれは確か…小学生の時。



クウの両親が事故で亡くなり、クウが天涯孤独の身になった時。



少しだけ私に見せた顔。



その時のクウは、私のとってヒーローだったから、こんな顔もするんだって凄く驚いたのを覚えている。



今思えば、不謹慎だったよね。



誰だってあんなことが起これば、悲しい顔をする。



クウだって…



あっ…そう言えばその時からだった。



私のことを『ハルちゃん』って呼ばなくなったのって…






「━━また…呼んでくれるかなぁ……


なんて…ね…」



私達に後ろ姿を向け、帰っていくクウを私はいつまでも見ていた。