「柊さん。あなたも力があればあの女が見えただろうに」




魔物のそばに寄り、少ししゃがむ。


そして魔物に右手を触れさせた…すると、



…魔物が、消えた。




「…ただの実験体ですから。

能力で消えてしまうのです」




意味深にそうつぶやき、笑う菊。



…その笑みを向けられたら、離れられない。


だって、その顔が…



…え?







………そうだ、菊にひかれた理由が…今、分かった。





「沙羅に…似ているんだ」




艶めく黒髪に、人をひきつける力を持つ漆黒の瞳。


白く美しい肌に、ほっそりとした顔立ち。



…全部、全部が似てるんだ。





「おい、あの女って誰だよ」



「おや、分からないのですか?

意外に頭が働かないのですね、柊さん。


まああの女だとは思わないのが普通かもしれませんけど」




あの女って…絶対に、ココだ!


…酷い、仲間でしょ!?



なのに悲しみもしないわけ…!?