柊に続いて歩いて行くと、すぐにうっすらと階段が見えた。



「ここの階段は響きやすい、注意しろ。

あと、1階までいったら別の手段であがっていくからな」




うなずいて、階段を上がっていく。


音をたてないように…なんて足に全神経を集中させるもんだから、なかなかキツい。


けどひたすら我慢して、登り続ける。



…龍矢と、ナミ。




『俺が…アイツ…

……"ナミ"から見てどんなだったか、知りたいだけ』




龍矢は今までずっと…ナミのことを"天草"って呼んでた。


多分……今回の2人の失踪に、このことが絡んでいる。




待ってて。



すぐに2人の元へ、行くから。




「…着いた、ここが1階だ」



「…さすが王城、明るいようですね、まだ。

明かりが少し漏れていますが、結構明るい様子です」



「ああ。あと、このバッジをつけろ。

そして椿はこれを着ろ」



えーっと…このバッジはなに?


手にコロンと乗っかるサイズで、エスカッシャンと呼ばれる盾の形をしているもの。


右半分が赤で、左半分が白。真ん中には瑠璃色の瞳をした、オレンジ色とピンク色を掛け合わせたような色の鳥の姿が。



…いや、この色は、たしか…





「おい椿、早く着ろ」


「あ、ごめん!…って、これって…」



もらった服を広げて、やっと気付いた。



この、黒のロングコートって…



「お前を管理委員会って思わせておけばまだ周りを紛らわせることができるだろ。

女が何の用だって思われるかもしれねえし」



は、はあ…


別にいいけどさ…うん、デザインはかっこよくて好きだし…


でもまだ慣れないんだよなぁ。



そう思いながらロングコートを羽織る。意外にあったかい。


うん、あったかいから気に入った!