「おい、止まれって!!」




そんな叫び声とともに、私たちの前に現れた…薄い水色の透明の壁。



振り向けば、肩で息をしながらタブレットを手に持つ柊が。




「……なんで逃げんだよお前らっ!」



「だって…また面倒事に巻き込まれるかなって。

あ、そういえば私と零で結構王家のことは調べてきた…」



「今それどころじゃねえんだよ!!」



いつも整っている茶髪をぐしゃぐしゃとかきむしる柊の姿に、思わず息を飲む。



なんか…ただ事じゃない、よね?




「…なにがあったのですか」



零は柊にハンカチを差し出しながら言った。


柊の唇の端が切れて血が出ていたことに、やっと私は気づく。



そんなに強く噛んだってこと……?




ハンカチを受け取り、息を整えながら唇のあたりを何回もふく柊。



なんか、おかしい。



大した距離も走ってないのに…私と零はちょっと疲れた、ってぐらいなのに。


柊は私と零以上に体力があるはずなのに……


……もしかして、その前も走ってた?





「……くなったんだよ」



「え?」



やっと息を整え終わったにも関わらず、柊はずっとうつむいているまま。


拭いたばっかりなのに、また唇を噛んでる……




「………いなくなったんだよ」



「いなくなったって……誰が!?」



柊がこんなに必死になってまで、私たちに言う必要のある人物。



そんな人……限られてくる。



頭によぎる、共通の友達の顔。




「…まさか……」