「そりゃあ多分柊君の舌がおかしいのだよ。

なんせ、私のクッキーは美味しくないからねー」



「…はっ、そうだな。俺はきっと味覚音痴だ」



「そーそー!」


「1番最初に俺に食べさせるように袋を向けて、1番上にある唯一美味いのを渡したなんて、

そんなわけねえよな」




「…ないよ、そんなこと!」




バイバイ!と手を振りかけた時…また、腕をぐいっと引っ張られる。


思わず後ろを振り向くと、わずか10cmの至近距離に柊の顔が。




そっと柊の口元が私の耳に近付いて、一言つぶやいた。





「…ありがとな」





「………どういたしまして」





今度こそバイバイと手を振り、教室の中へ。


女子の視線が痛いけど気にしません。



柊ファンが怖いけど、気にしません。気にするけど、気にしません。





「…柊となに話してたんですか?」



零の隣に座ってすぐ、そんなことを聞かれた。


おお、零も見てたのか。


いくら至近距離だからって、勘違いされたらそれはそれで困るなぁ…



でも、いろいろ秘密にしたいし…




「……テストの結果、楽しみだねって話!」



「…あ、そうですか」



私のバレバレな嘘に気づきながらもなにも言わない零。



そんな零に、今度は美味しいクッキーでもあげようかと考えてた時。




「はい、全員いるようだな。

成績を返すぞー」




男の先生が入って来て、テスト、続いて順位表が渡される。



まずは、テスト!