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「椿ちゃんに関して最も怖いこと。


それは"全て盗んでしまう"ということ、かな」




「…どうゆう意味?」




龍矢は笑顔を浮かべながらも、やはり心配そうな顔つきは消えていない。


なんだかんだ優しい奴だ、と思う。



とりあえず椿ちゃんの家に勝手にあがらしてもらったけど、別にやましいこととか考えてないよー?



そうゆう時はそうゆう時なりの空気で来ますよ、僕だって。



…まあ、それは置いといて。




「椿ちゃん…あの牛男を倒す時、

躊躇なんてなさそうだった」



「………なるほど」


さっすが龍矢。もう分かっちゃったのか。


…僕が調べた限り、椿ちゃんは人を倒す学生決闘に最初は戸惑いもあった。



けどそれはとりあえずなんとかなったんだよね。


でもいきなり人外を…あんなに簡単に倒せるとは思わないんだよなー。


攻撃って意味じゃなく、




精神的な面で。








勝手な推測だけど。


椿ちゃんは……もしかしたら、血だとか戦いだとか……そうゆう類(たぐい)に、今までに触れたことがあるのかもしれないなぁ……




「椿ちゃんの能力の詳しい話は…

椿ちゃんが起きたら話すからさー」



「…分かった」




龍矢は立ち上がると、外に出て行った。


うーん、僕を女の子の家に1人置いて行くことに戸惑いはなかったのかなー…



ま、さすがに病人は襲わないよ!……多分!




すやすやと眠る目の前の女の子に、そっと笑いかける。





「やっぱり……君は面白い」




僕の声は、きっと誰にも届かなかった。