やっと、やっと気付いた。



1つの花をとり、また涙を流す。



これはビスカリア…



なんかじゃ、なかったんだ。




やっと、やっと分かった。




最近花の図鑑を見てやっと分かった。お母さんが僕に伝えたかったことが。




図鑑の中のビスカリアは、僕が今まで見てきたのとは全然違くて。



目の前の花は、ビスカリアにしては花弁が多く、ビスカリアにしてはいくら淡くても比べてみれば色が濃かった。




「…お母さんは…信じろ、と僕に言うのですか……!」





この花のように。



この花の本当の名前は





「"アスター"…ですね、お母さん。


花言葉は…



"信じる心"………!!」




お母さんは信じろ、と僕に伝えたかったんだ。



ビスカリア…お父様の好きな花と、嘘をついて。




お母さんは信じていたんだ、あの男を。



お母さんは最後の最後まで…あの男の妻に殺されるまで…信じていたんだ。




「…そんなに好きだったのですか、お母さん」




もう誰もこたえてくれない。


僕の問いに、誰も。




「すいません、お母さん…

僕はビスカリア…いえ、アスターの心は…!」





もう…




もう、





「なくなってしまいました……!!」







お母さんとお父様が、どんな出会いをしたのか。


知るはずも、分かるはずもないそんなことを考えてみる。



けど、分からない。



大好きなお母さんの心でさえ、分からない。





「…もう、疲れました…」




近くに確かあった崖…危険な考えが浮かぶ。



足がそちらの方向へ向いても、なにも思わなかった。




これで、楽になれるのなら…


花々に背中を向け、足を進めたその時。


ほおに何かが当たった。




「っ…え…?」




それはさっき自分が取った、1輪のアスターの花。




淡い紫色のそれは、僕の心に笑いかけているようにも思えた。





「…信じろ、というのですか、お母さん…」




もう誰も信じられない。


自分の未来でさえ。