「うるさいっ!」


ああ〜、もぉ、自分からキスなんてするんじゃなかった。


今、思い出しても顔から火が吹きそうだ。


「もぉ、冗談だってば。そんなムキにならないでください。大きな声を出すとみんなが見ますよ。ほら早く食べないとお味噌汁も冷めちゃうし。」


何事も無かったみたいに涼し気な顔して食べる陽日。


誰のせいでお味噌汁冷めてるのよ。


腹立つわぁ………。


そりゃ、確かに温泉に行って私の中で陽日の存在が変わりつつある事を伝えたけど……。


何かムカつく。


面白くない。


「言っておくけど、暫定はそのままよ。だって私、まだまだあんたの事、知ってる訳じゃないし。」


ふん、どうだ。


ちょっとムキになって大人気無いけど言いたい事、ハッキリ言ってやった。


勝ち誇った気でいるとーーー


「そうだね……。沙紀さん俺の事、何も知らないもんね。」


それだけ言うと陽日はまた黙々と食べ始めた。









な、何よ………。


いつもなら、何か言い返してくる癖に。


憎まれ口の一つでも言う癖に。


そんな風に言われるとこっちも調子狂うじゃない。


黙って口をつけたお味噌汁は意外にもまだ熱くて驚いたけどその事を陽日に告げることも無く私も黙々と食べた。