「邪魔だった?」


「座れば?」


不安げに聞いてくる陽日に声を掛ける。


陽日はいつからそこにいたんだろうか?


私と藤枝さんの話をどこから聞いていたのだろうか?


私の隣に座るものの陽日は何も言わない。


「藤枝さんと昔ね、付き合ってたんだ。」


だから正直に話そうと思った。


「そうなんだ…。」


全く抑揚のない声の陽日。


「凄く好きだった。」


「へぇ……じゃ、ヨリ戻すの?」


いつになく自信ない陽日の言葉に驚く。


「戻さないよ。だって私にはあんたって彼氏がいるじゃん。暫定だけどね?」


敢えて明るく言うものの、


「だけど俺ーーー沙紀さんが藤枝さんに本気なら構わないよ。………元々そういう約束だし。」


こちらを見ることも無く、うつむき加減にぼそぼそと話す陽日。


こんなしおらしい陽日にお目にかかる事なんて中々無い。


なのでつい意地悪したくなる。


「じゃあ、遠慮なく元サヤになろうかな。」


「えっ。」


一瞬で陽日が顔を上げてこちらを見た。


仕方ない……。


私もそろそろ自分の気持ちに素直になるか。


目の前の陽日を見ているとそう思わずにはいられない。


「ねぇ、私の気持ち伝えてもいい?」


私はそのまま陽日に唇を重ねた。