「そっか。結局、僕達は縁がないって事なんだな。」


藤枝さんがさっきまでとは違ってどこか吹っ切った様に言った。


その夜空を真っ直ぐに見上げる姿は昔と変わらなくて。


嘗て、私が夢中になった人。


愛しくて仕方なかった人。


恋の切なさを知った人。


「もしかしてーーーー」


藤枝さんが不意に私を通り越してその先に目線を送る。


私もその先を追って振り返るとーーー












「なんだ、沙紀さんここに居たの?」


陽日が笑顔で立っていた。


だけど、私には笑っているようには見えない。


あの日、遊園地で見た時と同じ悲しい目をした陽日がそこにいた。


「彼がーーーそうなんだね?」


藤枝さんの問い掛けに私は首を縦に振った。


「そっか。」


藤枝さんはベンチから立ち上がると陽日に近づいていった。


何を言うんだろうって一瞬不安が過る。


私の心配を他所にとても穏やかな声で藤枝さんは陽日に声を掛けた。


「確か販促の加藤くんだったかな。」


「はい、そうです。」


一瞬で陽日の顔が強張る。


「彼女を探していたんだね。すまなかった。酔いを冷ましていた彼女を見かけて、つい昔話をして懐かしんでいた。それだけだよ。お陰で良い時間が過ごせた。じゃあ、戸田原さん、僕はこれで。」


後半の言葉は私に向けて言った。


もうその呼び方は沙紀、ではなかった。


藤枝さんとの恋が漸く終わった気がした。