「じゃまぁ、乾杯?」


志賀の声にそれぞれグラスを合わせるものの、この状況で乾杯なのか?と疑問が頭を過る。


店の人が訳ありだと判断したのだろうか、気を利かせて個室に案内してくれた。


この個室って…あの時の…だよね。


私が悪夢を思い出していると志賀が早速ストレートに疑問をぶつけてきた。


「でさぁ、早速なんだけどお前たちいつから付き合ってんの?」


「つい最近です。」
「付き合ってないって!」


全く正反対の答えに志賀もため息をつく。


「志賀さん、ちょっといいですか?」


「なんだよ、改まって。」


陽日の声に志賀も姿勢を正す。


「実はですね。つい最近、俺から沙紀さんに告白したんです。」


「へぇ…お前からかぁ。それで?」


「はい、それでまぁお付き合いを始める事となりまして…彼氏という訳です。」


「ちょっとぉ!さっきから黙って聞いてりゃ勝手な事ばっかり言って。肝心な事がぬけてるじゃないのよっ!」


「肝心な事って?」


とぼけた顔で陽日が言う。


「惚けないで。暫定でしょ?ざ、ん、て、い。ちゃんと彼氏として確定した訳じゃ無いんだからね。そこんとこ、きちんとしてよね。」















「あのさ、やっぱお前らの話、よく見えないんだけど?」


と、志賀。


ですよねぇ……。