暫定彼氏〜本気にさせないで〜

「ハルキくんのお父さん、お母さん、どこにいますかーーー?」


迷子のハルキくんを肩車して大声で叫ぶ陽日。


ちょっとでも目立つ様にと肩車したんだけど、ハルキくんは5歳、結構重い筈だ。


沙紀さんはそこのベンチに座っててーーー


そう言われたけど、こんな状況で呑気に座ってなんかいられない。


それに肩車されて喜んだハルキくんだけど、本当は直ぐにでもお父さんお母さんに会いたいはずだ。


これでも学生の頃、ソフトボール部だった私。


嘗ての部活を思い出し、大声で叫ぶ。


「迷子でぇーす、ハルキくんここにいまーーーーすっ!」


「おばちゃん、声、うるさい。恥ずかしいよ。」


「はぁ?うるさいとかって何よ。それに恥ずかしいってあんたの為にこうして呼んでるんでしょ。」


「おばちゃん、僕の名前はハルキ。あんたとかってやめてよ。名前でちゃんと呼んでよね、おばちゃん。」


ーーーーこのクソガキが…絶対わざとおばちゃん連呼してるよね?


「おばちゃん、おばちゃんって言うけれど、私はまだ20代なんです!その……ギリギリだけど……。兎に角、若いんだからおばちゃんって呼ばないの。」


「ええー、だって、おばちゃんにおばちゃんっていって何が悪いの?うちのお母さんも僕の友達には自分の事、おばちゃんって言うよ?」


「それはお母さんだからでしょ?私はまだ結婚もしてないし、子供もいないの。だからおばちゃんじゃなーーーいっ!」


「わぁ、怒った怒った、おばちゃん、こえー。おばちゃんビーム出てくるぞー!よーし、ニンジャマンで攻撃だ!しゅりけんビーーーーム、ビビビビビ」


ハルキくんが頭の上で暴れるから陽日が思わずよろけそうになる。


「おいおい、ハルキあんまり動くなって。危ないぞ。」


「わーい、怒られたぁ。ニンジャマンハルキが怒られたぁ。」


ざまぁみろと言わんばかりに騒いでいるとーーー









「おばちゃん、大人げないよ。」


ハルキくんが呆れ顔で私に言う。


5歳児にたしなめられるアラサー……。







「はるくん?」


私とハルキくんがぎゃあぎゃあとやっていると突然声がした。


声のする方にみんなして振り向くと、ハルキくんのお父さんお母さんらしき人が立っていて………


って言うか……お母さん、私より若くないか?