暫定彼氏〜本気にさせないで〜







「美味しかったぁ、幸せ。」


綺麗に空になったお弁当箱を片付ける私の隣で、まるで天使の様な笑顔の陽日が言う。


「そっ?それは良かった。たくさん、作ったから無理して食べたんじゃない?」


「全然、まだまだ食べれますよ。そだ、沙紀さん、ソフトクリーム食べる?」


いや、今お腹一杯だし。


凄いな若者の食欲。


「ううん、私はいいよ。食べたいんだったら遠慮しないで食べて。」


「ほんとに?じゃあ、遠慮なく。じゃあ沙紀さんには何かドリンクでも買ってこよっか?」


「ありがとう、大丈夫だよ。」


なんだかんだ言っても気が利くのよね。


きっと、今までも女の子には優しくしてきたんだろうな。


売店に掛けていく陽日の後ろ姿を見ながらそんな事を考える。


一体、なんで私なのかな。


からかってるって最初は思ったけど、こうして一緒にいるとそんな風には思わないし。


でも腹黒いってのは分かってきたけどね。


それにしても遊園地なんて凄く久しぶり。


中々、来ることないもんなぁ、アラサー。


お天気も良いし、気分が開放される気がする。


かなり強引だったとは言え、結果的には休日にこんな風に出掛けて良かったかも。


一人、伸びなんかしていると陽日が困り顔でこっちにやって来る。


ん?


子供?


陽日はソフトクリームでは無く、その手に小さな男の子を連れてこっちにやって来た。