「返事は?」


私が黙ったままでいると陽日が答えを急かす。


「もぉ……、良いに決まってるじゃない………。」


不意に声を出すとつい、涙腺が緩みそうになる。


「良いの?暫定じゃなくて?」


とまた意地悪げに笑いながら聞いてくる。


「当たり前でしょ。それとも暫定で良いの?」


「まさか。確定なら契約の印貰わなきゃーーー」


陽日はそう言いながら私の唇を塞いだ。


初めは優しく啄むように何度も唇は重ねられその都度、愛しげに見つめる陽日の視線が熱い。


やがて陽日の手が私の後ろ髪に差し込まれるのを合図に一気にそれは深いものとなった。


こんな会社の非常階段で………


誰かが来たらどうしようって思うのに


私からその唇を離すことが出来ない。


陽日の首に腕を回し、もっと、と離れていきそうになる唇を求めてしまう私はなんてはしたないんだろう。


一頻り、重ねられた唇は漸く離れ、私は陽日の胸にそのまま埋められる。