次の日、俺は父親の会社に来ていた。


岩崎さんには話を通してある。


「時間がない。手短に話してくれ。」


相変わらず、忙しげにドアを開け社長室へと入るなり父親が言った。


「父さん、聞いてほしい話があります。」


「要件を端的に言え。まどろっこしいのは嫌いだ。」


いつもと変わらぬ物言いにも今日は余裕で耳を傾けられる。


「俺、やはり彼女の事は諦めません。」


呆れた様に俺を見ると深い溜息を吐いた。


「そんな事を言うために貴重な時間を使わないで貰いたい。その事は勝手にしろと言った筈だ。ただし、ビジネスに不利になるような事だけはするな。岩崎、車の手配を。バカバカしいことにこれ以上、時間は使えん。」


「承知いたしました。」


岩崎さんが内線で車を正面玄関に回すよう支持を出す。


「用が済んだのなら早く行きなさい。ここはお前ようなものがいる所ではない。」










「父さん、俺に父さんの跡を継がせてください。」
















出掛ける準備をしていた手が一瞬止まった。


「悪いがお前のおふざけに付き合うほど私は暇ではない。」


「父さん、俺は父さんを一人にはしないから。父さんにこれ以上、寂しい思いはさせないから。」












こんな事、いきなり言っても通用するような人じゃないのは分かっているけど


それでも今、思っている事をちゃんとこの人に伝えなきゃって俺は思ったんだ。


それが俺のケジメなんだと思ったんだ。