沙紀さんの顔を見ると全てを話さなきゃって思う。


彼女を不安にさせていたんだと思うと胸が苦しくなる。


けれどその前に俺にはケリをつけないといけない事があった。


それは父親へのケジメだ。


俺は沙紀さんに何れ全てを話すから信じて待っていて欲しいと頼んだ。


随分と勝手な事を言ってるなって自分でも思ったけど、そんな俺すらも沙紀さんは受け入れてくれた。


沙紀さんの華奢な体を抱きしめる。


唇を合わせると自分でもコントロール出来なくなるんじゃないかってくらい気持ちが溢れてくる。


体は冷えていたけど重ねた唇から熱が伝わってきて……。


この人を離しちゃいけない。


心からそう思った。


だからーーー


もう偽ることなく沙紀さんと向き合おう。


そして、俺の事をちゃんと好きになってもらおう。


名残り惜しい気持ちを何とか抑え、漸く沙紀さんの所から離れた。


もう寒さは感じなかった。


沙紀さんの事を思うだけで胸の奥から温かいものが湧き上がってくるからだ。













帰り道、ふと、俺のスマホがバイブする。


画面に表示された文字を見て一気に現実に引き戻された。


今、一番声を聞きたくない人物からだ。


















「お久しぶりです………父さん。」


俺は体がまた急速に冷えていくのを感じた。