「さあ、家に送ります。僕もそろそろ戻らないと。」


当の本人はいつも通りの無表情。


「あっ、はい…すいません。」


えっ、て言うか今の話はスルーなのね。


なんだったら、私の聞き間違い？


それともこれ妄想の世界なのか？


クエスチョンだらけの頭で車に向かう樋山さんの後を追う。


すると樋山さんが急に振り向いて


「それとーーー」


「ん？」


目の前に立つ長身の樋山さんを見上げる。


「やはり、気が変わりました。欲しいものはどうしたって手に入れる事にしました。」


「えっ……それってどう言う事…？」


「どういうってそのまんまでしょ。あなたの事を諦めるのはもう少し先にすることにした。」


「いや、でも私、好きな人がいるんですけど……」


「そんな事、知ってますよ。何を今更改めて言ってるんですか？さっ、早く乗ってください。」


促されるまま助手席に座らされる。


やはりサイボーグ樋山さんという人を理解するにはまだまだ時間が掛かりそうだ……。


私は樋山さんにバレないよう溜息を一つ吐いた。