「ご馳走さまでした。」


「ちょっと待ってて。」


と樋山さんがそう言うのでその間に空になった容器を片付けていると、どこからか温かい飲み物を持ってきてくれた。


私には無糖の缶珈琲。


さすがは優秀な秘書である樋山さん。


私が珈琲はブラックで飲む事をちゃんと把握している。


にしても………


樋山さんは甘ったるそうなミルクティーだった。


「ありがとうございます……あの、もしかして樋山さんって甘い物が好きなんですか?」


スイーツと言いミルクティーと言い……。


「ダメですか?」


「いえいえいえいえ、全然、オッケイです。」


半端ない威圧感に全力で肯定する。


缶珈琲のプルトップを開け、一口飲むとじわりと体の中に温かいものが入っていくのが分かった。


目の前には綺麗な夜景が広がっている。


少し気持ちが落ち着いた所で聞いてみる。


「あの……どうして?」


「なにが?」


「だから、どうしてここに?」


「ちょっと糖分補給したかったので付き合って貰いました。」


「糖分?」


「僕、甘い物が好きなので。」


やっぱり相当の甘党なんだ。


だけど樋山さんが甘いものって……


全然、イメージと繋がらないんだけど……。


「落ち着きましたか?」


「えっ?」


「僕は仕事で行き詰まったり、疲れたりしたら一人でここに来て夜景を見ながらスイーツを食べます。」


「い、意外ですね……。」


「そうですか?僕も普通の人間ですから。」


いや、普通ではないよね……言えないけど。


「でもあなたが落ち着いたようなので良かったです。」


「樋山さん……。」


私がカッとなってあの場を出てきてしまったから。


だから家に真っ直ぐ向かわずにここへ?


確かに私は今、凄く落ち着いていた。


ほんの少し前まではもう何も考えられなかったのに。