暫定彼氏〜本気にさせないで〜

「それで今日、その話をしたのね?」


「ああ、したよ。今日こそ加藤さんとの約束を守る時と思ったからね。」


「伝わった?」


「いや、どうかな。そうやって生きてきたやつは直ぐには自分の考えを切り替えたり出来んものだよ。自分の仕事スタイルにプライドを持ってやってるからな。それはワシにも分かる。」


「おじいちゃん……」


「父さんは十分、変わりましたよ。」


ずっと黙って聞いていた伯父が声を掛けた。


「こうして父さんが一生懸命築いた会社を今では私の好きにさせてもらってる。まぁ、今回の件は父さんの独壇場だけどね。特に加藤くんと沙紀の事については。」


「あっ……伯父さんに黙っててすいませんでした。」


「そうだよ、お前もそういう事は早く言いなさい。樋山くんに申し訳ない事をしたからね。」


「社長、私の事はどうぞお気遣いなく。」


ずっと部屋の隅で待機してる樋山さんがそこだけは話に入ってきた。


もちろん、顔色一つ変えずに。


「それでだーーー」


おじいちゃんがまた話を戻した。


「今後の事について一つの提案を出したんだ。」


「提案って?」


「お前と加藤くんの事じゃよ。」


「どういこと?」


「この際、加藤くんをお前の婿に貰おうと思ってな。」












「はあ?」


今、分かった気がする。


伯父がときたま突拍子もない事を言ったりやったりするのって……


おじいちゃん譲りだったのね……。