「あの……ごめんなさい。私、昨夜、かなり酔ったみたいで……ご迷惑お掛けしました。」


コーヒーカップをテーブルに置き深く頭を下げる。


「確かに相当酔ってたし乱れてましたよねぇ。」


と、言いながらすまし顔でコーヒーを飲む加藤陽日。


「えっ!私、そんなに乱れてた?ま、マジかぁ……。」


アラサー女子の醜態。


見苦しすぎる………。


思い切りへこむ私に


「ウソですよ。ちょっとテンション高いくらいで酷い状態では無かったですよ。それに可愛かったし。」


か、可愛いって……。


「別に迷惑な事なんて全然してないし、気にしないでください。俺は寧ろこんな風に沙紀さんとモーニングコーヒーを飲めて夢のようですよ。」


とてもついさっき起きたばかりとは思えないほど爽やかな笑顔で彼が言う。


何となく彼越しに置いてある真っ暗なTVの画面に映る我が身のシルエットで少なくとも頭がボサボサな事に気付く。


えらい違い……。


て言うか、やっぱりどう考えてもおかしいよ。


健全な男女が同じベッドで寝て何も事が無かったなんて……いや、別に事を起こして欲しかった訳じゃないけど、なんて言うか……逆に不自然だよ。


何が一緒にモーニングコーヒー飲めて嬉しいよとかって、そんな上手いこと言って、やっぱり何かあるんじゃないかな。


そうよ、つい飲み過ぎて忘れてたけど、本性を暴くんだって私、昨日は意気込んでたじゃないのよ。


あー、危ない、危ない。


すっかりこのまったりな雰囲気に流されて忘れる所だった。


でもさ……何かこんな展開になっちゃって本性を暴くも何も、もう関わらない方が身のためだよね。


面倒臭そうだもん。


裏の顔とかもういいや。


よし、とっとと帰ろう。


そして何もかも無かった事にしよう。


はぁ……今日、仕事休みで良かったわ。


「えっと、私そろそろ失礼しようかと……」











「沙紀さん、今日どこ行こっか?」











はぁ?
なんですと?