暫定彼氏〜本気にさせないで〜

「ワシとは違って加藤さんはコツコツと地道な商売をしていた。その頃、商売を手広くする事ばかり考えていたワシとは次第に疎遠になっていった。」


少しおじいちゃんの顔が歪んだのは気のせいだろうか。


「そして、次に再会した時、加藤さんは病院におった。」


えっ………病院?


「加藤さんは不治の病におかされておった。漸くその事を知ったワシは大層、悔やんだ。」


「どうしておじいちゃんが悔やんだの?」


「あれほどまでに親交のあった加藤さんの体調の異変に全く気付かないほどワシは仕事ばかりしていたからな。」


と悲しそうにおじいちゃんが言う。


おじいちゃんには、今でもその悔しさがあるのかもしれない、心の深いところに。


「それからワシは加藤さんを出来る限り見舞った。時間を作っては病院へ通い、そして二人で昔の様に沢山の話をした。そんな加藤さんがそれは嬉しそうに話をする事があった。」


「嬉しそうに?」


「ああ、孫の話じゃよ。」


孫って………


「陽日の事?」


「そうじゃ、加藤くんの事じゃ。ずっと孫の顔が見れたら、もう思い残す事は無いって思っていたのに今、こんな体になっても、まだまだ可愛い孫の成長を見てやりたいと欲が出てきたと。」


そうなんだ……そんな事を。


陽日もこの話を聞いたのだろうか。


そして、どう思ったのだろうか。


「それから加藤さんは息子さんの事も常に気にかけておった。自分が不甲斐ないせいで息子はあの様な仕事人間になってしまったと。」


「どういう事?」