暫定彼氏〜本気にさせないで〜

「結論から言おう。今回の所は引き取って貰った。」


「本当に?」


「ああ、本当だ。ただし、取り敢えずだ。」


「どういう事?」


「まだ先は分からんという事だ。」


「それってうちが吸収されちゃうの?」


「まぁ、落ち着きなさい。先ずは順を追って話さねばな。」


「順?」


「実はワシはグリーンホールディングス代表取締役である加藤氏の父親、つまりは加藤くんの祖父にあたる人物と親しい付き合いをさせてもらっていた。」


「えっ……じゃあ、おじいちゃんは加藤くんの事、最初から知ってて近付いたの?」


「いや、最初からではないな。話をしていてある時、結びついた。」


知らなかった……。


そんな繋がりがあっただなんて……。


「じゃあ、加藤くんのお父さんの事も?」


「いや、彼と直接的な付き合いはない。と言うのも加藤くんのじいさんとワシがまだお互い小さな商店をしていた頃の付き合いなんじゃよ。」


そんな古くから………。


「当時、ワシは自分の店を大きくすることで必死だった。頭の中は仕事の事ばかりでな。朝昼晩問わず仕事ばかりしていた。そのせいで家族には寂しい思いをさせていただろう。こいつもまだ小さかったからな。」


おじいちゃんはそう言いながら申し訳なさそうに伯父に目をやる。


「まるで母子家庭みたいだったなぁ。」


伯父が懐かしげに言った。


「そうだったな。加藤さんにもよく叱られたもんじゃよ。家庭あっての仕事だと。」


確かにうちのお母さんも子供の頃、おじいちゃんはほとんど家にいなかったって話聞いたことあるけど


おじいちゃんからこういった話を聞くのは今回が初めてだ。