暫定彼氏〜本気にさせないで〜








……来てしまった。


上司に少し気分が悪いので医務室に行きたいと嘘を吐いてこっそり役員フロアにやって来た。


恐らく役員専用会議室で行われると思うんだけどなぁ。


とは言っても………


来たところで会議室に入れる訳もなく、せめて私が秘書課だったら、もう少し情報が得られたかもしれない。


恐らくもうそろそろ来ていてもおかしくない時間なんだけどなぁ。


いつまでもこんなところでウロウロしている所を誰かに見つかる訳にもいかないし。


仕方ない……。


諦めるか……


ヒラの私がどうこういう問題じゃないもんね。


早く職場に戻ろう。


医務室に行ってないの課長にバレたら困るし。


またエレベーターホールに向かおうとした時…………
















「何をなさってるんです?」


後ろから掛かった声で一瞬の内に血の気が引いていくのを感じた。


ゆっくりと振り返り早急に嘘臭いほどの笑顔を貼り付ける。


「お、お疲れ様です、樋山さん……。」


「どうしたんです?いつだってここに来るのを嫌がるあなたが珍しい……。」


「えっと……ちょっとエレベーターに乗ってて……それでえっと……ぼーっとしてたら押す階を間違えた?」


「私に問いかけられても困りますが。」


この前、食事に行った時は僕とかって言ってた樋山さんは、さすがに会社では秘書モード全開で


にこりとも笑わずに言う。