食後におばあちゃんが点ててくれたお抹茶を皆で頂く。


はぁ……これも久しぶりだな。


濃い上質の抹茶の香りと独特の苦味と甘みが口の中に広がる。


お作法は無視して飲んでいても、自然と背筋がしゃんと伸びる思いがする。


陽日がそろそろ失礼すると言うので私も一緒に立ち上がる。


「またご飯食べにいらっしゃいな。イケメンの方が食べてくださると私も張り切っちゃうわ。」


いつまでも少女の様な可愛いおばあちゃん。


私もおばあちゃんに似ればよかったなぁ。


そうすればもっと可愛げのある女子になれたかも。


そんな事を思っていると陽日がニヤニヤとこちらを見る。


まるで私の心を読んでいるかのように。


「ご馳走さまでした。落ち着いたら………是非、またお邪魔しても構いませんか?」


「もちろん。」


陽日の言葉に祖父母が優しく微笑む。


落ち着いたらって……そんな日来るのかな。


これから本当にどうするんだろ。


おじいちゃんは陽日の辞職願いを預かったままにしているって言ってた。


それは社長である叔父にも内緒の話だ。


おじいちゃんが言うにはあいつが絡むと話が面倒になるからだって。


なので社内では未だ陽日は休職扱いになっているらしいけど…。


私達どうなっちゃうんだろ……。


そう思うだけで不安に押しつぶされそうになって涙腺が緩みそうになる。


そんな私を見ておじいちゃんが心配顔で言う。


「沙紀、何も心配いらんよ。ワシが何で清掃員になりすまし社内でうろついていると思ってる。困っている社員を助ける。今こそワシの出番じゃないか。」


「おじいちゃん………うん、ありがとう。」


祖父母が目の前で優しく微笑んでいる。


先の事を考えても仕方ない。


今はおじいちゃんの言葉を信じるしかない。


そして隣で同じ様に優しい目で私を見つめる彼の事もーーーー


信じたい。