「本当に覚えてない?」


うん、全く覚えてないんだよ。


仕方ない。


いつまでもこの状況じゃどうにもならないし白状するか。


「ごめん、覚えてない。」


「そっかぁ、覚えてないんですね。じゃあ、今から思い出させましょうか?熱い夜の出来事を……」


ギシッ………


な、な、何よ。


一瞬、抱きしめていた手を緩めるとあっと言う間に今度は私に覆い被さる。


整った顔がかなり近い距離から私を見下ろしている。


その綺麗な瞳と引き締まった唇がゆっくりと近づいてきて……


「ちょ、ちょ、ちょっとーーー」


思わずギュッと目を閉じるとフーッと顔に息が掛かった。


「へっ……?」


驚いて目を開けると


「嘘ですよ。残念ながら昨夜は何もありません。」


と、こっちは散々テンパってると言うのに、何時もながらの穏やかな笑顔で加藤 陽日が言う。


「えっ、ほ、本当に?」


「はい、本当です。それともーーー無理やりにでもすれば良かったですか?」


「な、なに言ってんのょ……」


さすがの私もこの展開に頭がついていけなくて、言い返す言葉にもイマイチ、力が入らない。


「ーーー分かりました。本当に覚えていないみたいなので……」   


残念そうにそう言うと彼は漸く私を解放しベッドから降りた。