「最初はね、この告白にはなんかあるんじゃないかって思ってた。だって全然私達、接点なんてなかったしそれに突然だったし。だから嘘っぽい告白だなって思ってた。」


抱き締めたまま陽日に言う。


「そうだよね……さすがに無理があったね。」


「そうだよ、あんな非常階段でなんて……ムードも下手くれもない。」


私が拗ねたように言うと


「ごめん……」


陽日はさっきから謝ってばかりだ。


「でもね、気付いたら陽日の事ばかり考える様になっていた。」


「本当に?」


「うん、きっかけはね、初めて一緒に出掛けた遊園地で陽日を抱きしめた時からかな。それ以来、何となく気になるようになった。」


「そうなんだ……。」


「だけど初めから恋とかって言う思いとは違って、一緒に過ごす内に私の中で陽日の存在が徐々に大きくなっていた。認めたくなかったけどね。」


「素直じゃないなぁ。」


「だって……年だって私の方が上だし、私なんて地味な顔してるしアラサーだし。その上、何の取り柄もない私に社内イチの人気者が本気になるはず無いって、きっと何かの罰ゲームで告白したんだってずっと思ってたから。」


「そんな風に思ってたの?」


「うん、初めはね。だからあんたの腹黒い本性をきっと暴いて会社中に広めてやろうって。凄い意気込んでた。」


「ま、マジで………それ、怖すぎっ」


一旦、私から離れるとなんとも情けない顔で陽日が言う。


「マジだよ。だけど、一緒に過ごしているうちに、ちゃんと陽日の気持ちが分かったから……あの時の……キスでね。だから私も陽日の気持ちにちゃんと向き合わなきゃって思ったんだけどね。」


「そうだったんだ。なのに俺のせいで結局、こんな事になっちゃってごめん。沙紀さんを思う気持ちが強くなる度に早く正直に話さなきゃって思ってたのに……ほんと、ごめん。」


「さっきから謝ってばかりね。ねぇ、知りたいの。あの時のキスは本心なの?嘘じゃないよね?信じていいの?」