「聞きたい事って何?あっ、もしかして今日ズル休みした事?なんだバレてたのかぁ…。」


「お前、いい年してズル休みしたのか?」


呆れ顔でおじいちゃんが言う。


昔気質の祖父はそういった事にはめっぽう厳しい。


「でも本当に朝は具合いが悪かったの。もうしないから許してよ。」


こういう時は孫の特権を大いに使い、お願い顔をしてみせる。


「そうか、もうしてはいけないよ。」


まるで小さい子に言うみたいだな。


「沙紀、聞きたい事はそれじゃないんだ。」


なんだ、違うのか。


「何?」


「加藤陽日(かとう はるひ)くんを知っているね?」


えっ………


なんでおじいちゃんから陽日の名前が出るの?


「知ってます……。」


「沙紀、ここにはワシとお前しかいない。お前の素直な気持ちを教えてくれないか。」


素直な気持ちを……?


「加藤くんの事をどう思ってるんだ?」


「おじいちゃん……」












おじいちゃんが何を知りたがっているのか、何の為にそんな事を知りたいのか真意が読み取れない。


探ろうにも長年、一線で働いてきた人だもの。


所詮、私如きが足掻いても太刀打ちできる相手じゃない。


私は素直に気持ちを打ち明けた。


「彼の事がーーー好きです。」


「そうか……」


何かを考えるようなおじいちゃん。


おじいちゃんを困らせる様な事はしたくない。


「だけどーーー」


「だけど?」


「彼がどのような立場の人なのかを知りました。どうして私に近付いてきたのかも……」


口に出して言うとまだ胸がキュッと締め付けられる思いがする。