暫定彼氏〜本気にさせないで〜

「ご馳走さまでした。美味しかったぁ。」


「それは良かったです。どうぞ。」


食後のお茶を出して上げた。


この前、実家から貰ってきたものだ。


自分では絶対買わない、少し高級な茶葉だ。


お母さんがペットボトルのお茶ばかり飲んでないで、家にいる時くらい美味しいお茶を飲みなさいって帰り際に持たされたのだ。


「美味しい緑茶だね。食後にお茶をゆっくり味わうなんて久しぶりだな。」


まったりとした時間が漂う。


何となく時計を見るとーーー


それなりの時間だ。


「ねぇ……本当に泊まるつもり?お布団だって無いし……」


それに泊まるって事はーーー色々とあるかもしれないって事でしょ?


ちょっとそれは急な展開過ぎて気持ちの準備も何も……だよね。


「ベッドで一緒に寝ればいいじゃん。また沙紀さんの事、抱きしめて眠りたいんだけど?ダメ?」


「えっ……そ、それはダメ…かと思いますで。」


「ぷはっ。思いますでってなんだよ。冗談だよ。沙紀さん、テンパり過ぎだよ。」


「冗談?」


「泊まりたいけど、抑えきかなくなっちゃうし。」


「抑えって?」


ーーー沙紀さんの事をめちゃくちゃにしちゃうかもってこと。


「っ………」


耳元で囁かれ一気に心拍数が上がる。


「俺、前も言ったけどこう言うのは同意の上でしたいしね。」














「もし、私が良いよっていったら?」








目の前の陽日の顔が強張るのが分かった。


私は自分をズルいと思った。