暫定彼氏〜本気にさせないで〜

急いで帰って取り敢えずの片付けをして落ち着かない気持ちで陽日が来るのを待つ。


本当はシャワーくらい浴びたかったけど……となると化粧も落としてしまって良いのか？


いや、スッピンは流石にダメでしょ。


でもさぁ、そもそもシャワーして石鹸の香りプンプンさせるのも何か張り切ってる感じが微妙に恥ずかしいし……。


そんな事をあーでもないこーでもないと考えているうちに本当に陽日はやって来た。


玄関のドアを開けてあげると


「ただいま。」


と嬉しそうに言うから


「お帰り？とか？」


って言ってあげた。


「とかってなんだよ、とかって。そこはお帰りなさい、お風呂にする？ご飯にする？それとも、わ、た、し？じゃないの？」


調子に乗った事を言ってくる。


いつもの明るい陽日だ。


久しぶりに見るこの笑顔にホッとする私がいる。


「アホらし……だけど本当にご飯は？食べたの？」


「新幹線に乗る前におにぎり一個買って食べたけど………腹減りました。」


と情けない顔をする。


「じゃあ、簡単なもので良い？」


「ヤッター！仕事帰りに沙紀さんの手料理にありつけるなんて。」


目の前で大喜びする陽日を見ると本当にこういうところ子供みたいだなって思う。