暫定彼氏〜本気にさせないで〜

***


週が変わって同期会の夜、二次会はパスして家に向かって帰っているとスマホが鳴った。


画面を見ると陽日だ。


「もしもし?」


ーーー今、どこ?


「ねぇ、いきなり過ぎない?新人研修で習わなかったの?電話の掛け方。」


ーーーあいつもいるの?


人の話聞いてないな……


「あいつって?」


ーーー志賀さんに決まってんじゃん。今日、同期会だったんでしょ?志賀さんに聞いたよ。


「ああ、でももう帰ってきた。志賀は引っ張られて二次会に行ったけど。」


ーーーなんだぁ、良かった。


ふうん、心配してたんだ……


「ねぇ、出張の帰りなんでしょ?」


ーーーうん、そう。駅について今から家に帰るところ。疲れたけどこうして沙紀さんの声聞いてると元気が出てくる。


「何、言ってるんだか……」


調子の良い事言っちゃって。


けれど一人きりの帰り道が陽日との会話のお陰で寂しくない。


ーーーーねぇ……今から行っちゃダメ?


「えっ………今から?家にってこと?」


ーーーやっぱり沙紀さんの顔見たい。今週、忙しくて全然会ってないし。ダメ?


「いや、ダメって事は無いけど……もう遅いじゃない。」


と言いながらスマホを持つ手とは反対側にある腕時計に目をやる。


もう直ぐ9時半になるところだ。


ーーーじゃあ、泊めてよ。


「はあ?な、何言ってるのよ。」


ーーー良いじゃん、明日は休みだし。それに前は俺んちに沙紀さん泊めてあげたんだしさぁ。ねっ?じゃ、今から行くね?








ツーッツーッツーッ………



切れた………