だが、ここで擲つことは出来ない。


 そう思い、あえて感情を押し殺す。


 そして話をした。


 少しでも捜査が進むように。


「神宗会の当山謙太が第一容疑者で、共犯者がいることも考えられます。相手が暴力団員ですから、一層気を付けないといけません」


 一言そう言うと、前田が、


「ええ。とにかくまずは組対関係者が動かないと、話になりませんし」


 と返す。


「おそらく組対も内偵を行っているでしょう。……今出来るのは、とにかく三原社長殺しのホシに近付くことです」


「まあ、そうですね。俺たち所轄の捜査員もずっと気に掛けてますし」


「焦らずに進みましょう。何も短兵急に解決するヤマでもないのですから」


 言った後、息をつく。