「ええ。これと言って進展はないですが」


 と言って、口を開き、話をし始める。


 長年捜査畑にいる俺も、殺しのヤマには慣れていた。


 一筋縄じゃホシは特定できないのだが……。


 それにこの事件も決定的に情報不足なのだし……。


 石川が橋村と話すのをじっと聞く。


 合間に促されると、適当に受け答えした。


 慣れがあっても、幾分疲れてはいる。


 このヤマは、解決まで長引きそうだ。


 心の奥底で、そう思っていた。


 警官として、獅子身中の虫が騒ぎながらも……。