晴海と知り合い、結婚したのも、警視庁にいたからこそだ。


 橋村が、


「梶間さん、やっぱあのDNAの鑑定とか、科捜研の出す検案書見ないと、分からないことが多いと思いますよ」


 と言う。


「うん。俺もそう思う。……でもね、刑事ってのは昔から現場百遍なんだ。それは肝に銘じておかないと」


「まあ、そうですけど」


 新宿の街を歩き、現場にも行って確かめたのだが、分からないことは山ほどある。


 そしてその日も夕方近くになると、近隣のコインパーキングに停めていた車に乗り込み、警視庁へと走らせた。


 収獲ゼロでもいいのだ。


 いつも思う。


 何か目的がなくても、警察官なら、漠然とでも調べを進めるのが筋だと。