天性の嗅覚というやつがあまりないのだ。

 
 だが、それは分かっている。


 東大法学部にいた頃から、将来は法曹界入りを目指していたようだ。


 現に旧司法試験を受験し、通っていたのである。


 同時に国家公務員Ⅰ種試験も受験して合格し、進路は二つあったようだった。


 法曹界に入るか、国家の公僕となるか?


 天秤に掛けたようである。


 そして後者を選んだらしい。


 確かに公務員というのは安定しているのだが、警察官となると、拘束時間が長い。


 もちろん、どっちに転がろうが、本人の勝手なのだが……。


 それに法曹も激務である。


 弁護士も検事も裁判官も、一般的には憧れと裏腹なところがあった。


 火曜の朝、通常通り出勤すると、橋村がいて、