「おはよう、橋村君」


「ああ、おはようございます、梶間さん」


 橋村がパソコンから目を上げ、言った。


「今日も事件現場ですか?」


「うん。……嫌なの?」


「いえ。仕事ですので、我慢することも必要かと」


 橋村は夏の暑さが苦手らしい。


 分かる気がした。


 確かに若者は海辺で遊ぶことなどは好きでも、直射日光を浴びながら、蒸し暑い屋外で外勤するのは、遠慮しがちだ。


 午前十時までに一通り課内庶務を終えて、椅子から立ち上がり、歩いていく。


 吉村も、理事官や各管理官なども出払っている。


 上の人間がいないのは珍しい。