でも、何かを話してるようには見えたけど なにを言ったかまでは分からなかった。 アイツはなんて言った? 『……………………優しいんですよ、伊織くんは』 彼女が何か言った後、わずかにほほえんだ気がした。 その瞬間、胸が痛くなる。 「……………………っ」 信号は赤。横断歩道を挟んで向かい合う形にオレらはいた。 オレは赤信号だから、動けない。 彼女はオレを見て動けない。 通りすぎてく車でさえ、分からなくなるくらいに。