『じゃあ俺のこと、知る?』
そう言って、希尋に連れて来られたところは。
大きな大きな倉庫で。
「希尋、暴走族だったんだ………」
私はポカーンと、口を開けたのでした、まる(。)
「希尋が不良……」
「だから俺、言ったんだけど。
出来た人間じゃないって」
あぁ、まあ。
不良校に通ってる時点で、普通の一般人とは思わないけどね。
ヤクザとか、そういう分類の人も多々いるし。
「不良でも、いいヤツはいっぱいいるよ」
「知ってる」
そう言って、悪戯っぽく笑う希尋。
反則だ。
可愛いなんて、思っちゃうじゃんか。
私は視線を希尋から逸らし、倉庫を見た。
蘭華の倉庫よりも、一回り大きくて綺麗。
バイクも綺麗に並べられている。
「………違う…」
私は足を止めて、小さく呟いた。
どうしても、蘭華と比べてしまう。
あの蘭華の、少し雑然とした倉庫が好きだった。
下っ端達の為に、広間を大きく取ったせいで。
幹部室と総長室が小さくなってしまった、あの倉庫が恋しい。
そして、改めて突きつけられる。
もうあそこに、私の居場所はないのだと。
「礼央……?」
立ち止まった私を、不思議そうな顔で見る希尋。
「……何でも、ない………」
ギュッと手を握り締める。
深呼吸して、一歩を踏み出そうとした。
なのに。
足が竦んで動かない。
立ち止まった私の目に映るのは、皆んなで馬鹿やって、笑い合ったあの日々。