右手はドキドキと鳴り止まない胸を押さえ、左手は顔の近くまで引き寄せる。


「夏輝さん、こんな素敵な指輪……私なんかがもらっていいの……?」


しかも、付けられていたのは左手の薬指。

その意味をすぐには信じることが出来ず、手と声が震える。

そんな私を抱きしめる力を強くして、彼は優しく諭すような口調で言う。


「心の準備をしておくようにって言っただろ。……一生、俺のそばにいるためのな」


──ドキン、と心臓が喜ぶように踊る。

もう胸がいっぱいで、泣きたくなるほど幸せだ。

まさか、あの言葉がそんな意味だったなんて、わかるわけないよ。でも……。


「準備、出来てるか?」


そう問い掛けられたら、答えるのは簡単。

彼の腕の中で身体を反転させて向かい合うと、瞳を潤ませながらも満面の笑みを浮かべる。


「もちろんです……!」


肩から毛布が滑り落ちるのも気にせず抱きつくと、彼も笑いながらしっかりと抱きしめてくれた。



窓の外では、街が白く染められている。

あの日、雪の結晶と一緒に、私は恋に落ちた。

でも、この想いはいつまでも消えはしない。どんどん降り積もって、確かな愛になっていく。


あの瞬間から、人生最後の恋が始まっていたのだから──。





  ・:*:・End・:*:・