おばさんの店員さんから、お決まりのウイスキーが入ったグラスを受け取った彼は、容易いことのようにこう言った。


「マシロはイブが休みだったよな。その日はちゃんと時間作るよ」

「でも、なんか申し訳ない……」


時間を作ってくれようとしていることはすごく嬉しいけれど、私が仕事の邪魔をしてしまうようで、素直に喜べない。

手の中のグラスに目線を落としていると、夏輝さんは煙草を灰皿に押し付けながら、若干不機嫌そうな声で言う。


「美玲は俺といたくないのか?」

「っ、もちろんいたいですよ!」


勢いで正直に言い放つと、したり顔で口角を上げている夏輝さんと目が合う。

あ……なんか、ちょっと恥ずかしいことを口走っちゃったかも……。

また顔を熱くしてくるりと前を向くと、彼が突然耳元に顔を近付けてくる。


「その日はずっと離さないから。……ちゃんと俺のものになれよ」


セクシーな囁き声に、私の心臓は激しくジャンプした。

そ、それって、やっぱりそういう意味……!?

キスのその先のことを一瞬にして妄想してしまい、身悶えする私に、夏輝さんは素知らぬフリでグラスを口に運ぶ。

そんな私達の様子を眺めていた由香は、「陽介くん逃げてくれて正解だわ~」と言いながら、目が溶けるんじゃないかってくらいニヤニヤしていた。