器用じゃなければ出来ない和菓子作りをしている職人さんなのに、包装は出来ないと言う彼に笑いがこぼれる。

私は自転車から降り、お店の脇に停めると、おじさんと一緒に和菓子屋“柏屋”の中へ入った。


ケーキ屋とはまた違った、優しい甘さの香りが漂う店先で、大福を丁寧に包装紙で包んでいく。

手際良く作業する私の手元を覗き込みながら、おじさんは感心した声を上げた。


「ほー、やっぱり上手いもんだなぁ」

「これくらいは簡単です」


セロハンテープで紙を止めながら、得意げに笑ってみせた。


私、真白美玲(マシロ ミレイ)が勤めているのは、父が経営する包装用品専門店。

ギフト用の包装紙やリボンなどはもちろん、食品のトレーやパック、ビニール袋など多岐に渡って取り扱っているお店だ。

近所の食品を扱うお店や、会社のイベントなんかでも、注文を受ければすぐに対応している。


そして、プレゼント用のラッピングをするのも私の仕事。

ここの柏屋でもうちのパックを使ってくれているし、これくらいのサービスはお安い御用だ。


「はい、出来た」


綺麗な長方形に仕上げた包みを渡すと、おじさんはビニール袋を用意しながら満足げに笑った。


「おー助かったよ、ありがとう。このまんじゅう持ってきな」

「わ、いいの? ありがとう!」


適当におまんじゅうを放り込んだ袋を渡された私は、今日は朝からツイてるなと気分上々になるのだった。