「それが売りだったんじゃないの?」

「奥さんが身体を悪くしちまって、これまでみたいに作ることが出来なくなったらしいんだ。食材費も掛かるし、これを機に売れ筋のものだけにするんだと」


淡々と話すお父さんだけど、やっぱり表情は暗い。

もちろん私も、眉根をぎゅっと寄せたまま。


「じゃあ、また私達の売上も減っちゃうんだ……」


ぽつりと力無くこぼれた私の声が、静かなダイニングに響いた。

なんとか経営を立て直そうと、皆で試行錯誤してやってきたのに、それが水の泡になってしまったようで……。

ショックは大きくて、ふたりして俯き、黙り込んでしまう。

しかし、お父さんが突然ぱっと顔を上げたかと思うと、あっけらかんと笑って言い放つ。


「まぁ、しょうがないだろ! こればっかりは、俺達にはどうしようもないさ」


きっとお父さんも、本当は不安で仕方ないはず。

それでもその不安を感じさせないように無理して笑っているのだから、私も落ち込んでいられない。


「また一から……いや、マイナスからか。大変だけど、それでも皆で頑張っていこう」

「……うん」


疲れた顔で笑みを見せるお父さんに、私もなんとか笑顔を作って頷いた。

めげていたらダメだ、なんとしてもマシロを守らないと──。