箸を持ったまま固まる私に、お父さんは深刻そうな顔で言う。


「前々からダメかもしれないとは聞いてたんだが、タケちゃんもいろんな努力はしていたんだ。持ち直すかと思ったんだけどな……今年いっぱいで見切りをつけることにしたらしい」

「そんな……」


私が小さい時から親しみのあったタケちゃんがなくなるなんて、すごく寂しい。それに。


「タケちゃんがなくなるってことは、ウチとの契約も……」

「あぁ……大きな取引先がひとつなくなることになるな」


大きなため息を吐き出すお父さんに、私も落胆の色を隠せない。

ここのところ新しい取引先は増えたけれど、タケちゃんがなくなってしまえばすべて振り出しに戻る。むしろマイナスかもしれない。

発注数が減っていたとはいえ、それくらい利益のあるお弁当屋さんだったのだ。

せっかくいい波に乗れそうだったのに……。


「それだけじゃないんだ」


まだ何か問題がありそうな言葉に、私は箸を置いてお父さんを見つめる。


「アザミも、手作り惣菜の販売を最小限にすると言い出してな」

「えっ、どうして!?」


目を伏せて言うお父さんの言葉に、私はまたしても衝撃を受けた。

地域密着型スーパーのアザミは、店長の奥さんが作っているお惣菜が好評で、そのパックはマシロからすべて仕入れてくれている。

一人暮らしのサラリーマンや、主婦に人気だと聞いていたのに。