きゅ、と綺麗にリボンを結んだ彼は、神妙な顔をする俺を見上げ、懇願するように言う。


「大切な人がいるくせに、マシロを合併したいからって理由でみーちゃんに近付いてるなら、それはやめてもらえませんか」


切なげに眉を下げた彼は、カウンターに置かれた向日葵を見下ろして呟く。


「このままじゃ、みーちゃんが傷付くだけだ……」


……陽介くんの言う通り、俺は彼女を困らせているだけだろうな。

でも、俺も引くつもりはないんだよ。

ラッピングされた向日葵を手に取り、綺麗なそれを眺めながら口を開く。


「他に理由があるならいいのか? ……この花言葉みたいな理由が」


目線だけを陽介くんに戻すと、彼ははっとしたように少し目を開いていた。

口調も表情も仕事モードの厳しいものに切り替え、カウンターに片手をついて、身構える彼をじっと見据える。


「美玲のことを想うなら、自分がマシロのために何が出来るかを考えたらどうだ」

「え……?」


困惑した様子の彼に、手に持った向日葵を見せるように掲げる。


「この資材はマシロのものだろ? 花をたくさん売れば、ラッピング用品の消費量も増える。それだけじゃマシロの利益は微々たるものだが、何もしないで傍観してるよりマシだと思わないか」