あまり聞いたことがない自嘲するような声が、頭の中で勝手にリピートされる。

すると、少し緊張した面持ちで息を吸った三木さんが、こんなことを口にする。


「あなたは……どうなんですか?」

「どうって?」

「真白さんのこと、特別視してるような気がするので」


……時が止まったかのような静寂が訪れた。

聞きたいような、聞きたくないような、何とも言えない緊張が走る。

ドキ、ドキ、と自分の心臓の音がやけに大きく感じ、彼がどんな言葉を返すのかと耳を傾けていると──。


「……俺にとって特別なのはミキだよ」


優しい声色が、夜の闇に響いた。

あんなに大きく動いていた心臓が、止まってしまったんじゃないかと思うくらい静かになる。


……そっか、やっぱりふたりは両想いだったんだ。

そうだよね、お似合いだもん。ふたりでブライズに行くくらいだし、三木さんはあんなにベタ惚れなんだし。


でも……だったら、私に気があるようなセリフを並べないでよ。

もし私が、あの甘い言葉を信用していたら。

もしも……浅野さんのことを好きになっていたら、どうするつもりだったの?


心の奥から、どんどん負の感情が湧き上がってきて、もうふたりの会話が耳に入らなくなっていた私は、いつの間にかその場から走り出していた。