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残暑の日差しがまだまだ暑いある日の午前九時、私は自転車で城下町を駆け抜けていた。

かつて問屋などが集まってにぎわったこの場所は、歴史を感じる建物と、新しいカフェや雑貨屋が混在している商店街となっている。

レトロで時間の流れがゆっくり感じられるここは、地元の観光スポットでもある。


ここの通りにある私の職場に近付いた時、老舗の和菓子屋から店主が出てきた。

ひょろりと背が高く、白い割烹着を身につけたおじさんに、私は自転車を漕ぎながらいつものように挨拶する。


「おじさん、おはよー」

「あっ、美玲ちゃん! ちょっと待った!」


そのまま和菓子屋の前を通り過ぎようとした時、おじさんに呼び止められて、キキッとブレーキをかける。

振り向くと、彼はバツが悪そうな顔で笑っている。


「悪いね、引き留めて。ちょっとだけ時間あるかい?」

「どうしたの?」

「いやーこれから注文の品物を渡さなきゃいけないんだけど、綺麗に包んでくれって言われてさ。今ちょうど女房がいなくて、オレにはそんな器用なこと出来ねぇんだわ」


あぁなるほど、とすぐに理解した。

私に包装してほしいってことね。